「……そういえば他のメンバーは?」
ふと気になって聞いてみると拓斗くんは目を輝かせてこちらへ乗り出した。
「実はドラムに1人、目つけてる奴がいるんだよ。
あとはベースとキーボードだけど、気になる奴を見つけたらその都度、勧誘ってことで完璧だろう」
そう言うと、得意気に親指をたてている。
「じゃあ早く、ドラムの人の説得しなくちゃね」
「説得は……実は、何年か前からしてるんだ」
「専門学校の人じゃないの?」
「いや?専門学校の奴だよ?
俺、中学ん時からギター弾いてんだけど、高校に入ってからバンド組んで学祭とかでやってたんだ。
で、興味あって他の高校の学祭とか見に行ったときに1人だけ、すっげー気になるドラムがいて、そん時から声はかけてたんだ。
まぁ、最初は今のバンドがあるからって断られたんだけど、高校卒業してから、俺のバンドもだけど、解散してさ。
だからまたガンガン誘ってはいたんだけど……なかなかいい返事もらえないんだよね。
なんか、その高校の時のバンドと解散する時色々あったみたいなんだ」
「色々?」
「あ~……言ってしまえば方向性の違いってやつだ」
「方向性?」
「あいつは、音楽がすっげー好きで、専門学校行って、ずっと音楽やり続けるって決めてて、もちろん周りもそうなんだって決め付けてたんだけど、他のメンバーはそーでもないっていうか。
普通に大学行っていい企業に就職して……いい人と出会って、幸せな結婚生活を送りたいって人ももちろんいて、だから音楽一筋のあいつからすれば、なんか裏切られたみたいに感じちまったんだと思う。
簡単に音楽を捨てるかもしれない奴とは組まないとか言われたから、かなり慎重にメンバー選ぶつもりなんだと思う」
「えっ?!でも、高校の時から誘ってるんだよね?」
だったらそろそろ信用してもいいんじゃないの?と私が言いたかったことを察したように拓斗くんは笑った。


