歌いたいと念じて拓斗くんを見ると拓斗くんは視線に気づいたのか目が合った。
『歌えよ』
そう言ってくれたような気がして、何人かいる観衆の真ん中で声をだした。
「♪~」
「え?!」
蒼もだし、隣にいた女の人も、前にいた人も後ろにいた人だって。
とにかく、私の周りにいた人はみんなビックリしてコチラを見た。
そりゃそうだろう。
だって急に歌いだしてしまったんだから。
拓斗君のギターの音色に誘われてついつい歌ってしまったけれど、もう完璧にわかった。
すごく気持ちがいい。
拓斗君のギターは私の歌声に合わせて強弱をつけていく。
それがなんか生きてるような波を運んできてくれる。
しっくりくる。
そうか……。
今までは1人だから気づかなかったけど、仲間がいるってこういう感じなのか。
あったかくて、支えてくれて……1人じゃないって思える。
仲間っていいかもしれない。
1曲歌い終わると、そりゃあもう拍手喝采で、今まで気づかなかったけど後ろのほうにも人が増えていた。
いつも私が歌っている場所って田舎だから、こんなに人が聴いてくれたことなんてなかったのに。
拓斗くんといるから。
だから1人でいるよりも2倍もいいものができたんだと思う。


