歌はなく、ただギターの音だけが流れている。
この曲は……最近の曲だ。
本当なら明るいポップな曲なのに、拓斗くんの弾くギターの音色はアレンジしてあってなんだか切ない。
ドクドクドクドク……少しずつはやく打つ鼓動。
あ~、これはやばい。
拓斗君の言ってた『ピーンときた』っていうとは違うけれど、これは紛れもなく自分でわかる。
私の声と拓斗くんのギターは『相性がいい』
こんなに繊細なギターの音色。
多分、私の声とよくなじむと思う。
「……すごい」
隣にいる蒼も思わず認めてしまうほどだ。
ネックを自由に行き来する指先。
すごい。
こんな音色を聞いていると、喉がウズウズしてくる。
歌いたい。
歌を歌いたい。


