汚レ唄



土曜日、私と蒼は約束どおり、拓斗くんのギターを聴きに来ていた。


指定された場所に向かおうとしたところ、遠くに拓斗くんの姿を見つけた。


相変わらず今日もお洒落さんだ。



「蒼?ほら。少し、人が集まってるところ……分かる?」

後ろにいる蒼に向かって指をさすと、蒼はその指の先をたどって見つけたようだ。


「あのチャラチャラした奴がそうなのか?」

「うん。おっしゃれさんだよねぇ」

「……そーか?」



実をいうと蒼もセンスがいい。

田舎生まれのお洒落さんだ。

昔、蒼に服を選んでもらって髪を結ってもらったことがあった。

それからというものたまーに蒼に私の服をコーディネートしてもらうこともある。

それくらい蒼のセンスは信用している。


私の身近なお洒落さんトップ2がここに揃ったわけだ。



「じゃ、お手並み拝見して、さっさと断って帰ろうぜ」

「う、うん」


実をいうと蒼はこのためについてきた部分が大きいらしい。

私が断れなかったら代わりに自分が断るらしい。






だけど。



1歩1歩拓斗君に群がる人たちの中に近付くと、うっすらうっすらだけどギターの音だけが聞こえてきて、それを聴いているとなんだか喉の奥が疼いてきた。