私は17年間蒼の傍にいても、今みたいな、蒼の笑い方のひとつを初めて知ったっていうのに。
「俺にはなんでもわかるんだからな。
学校でいじめられたのか?それとも……なんか嫌になっちゃった?」
「ブー。学校は楽しいよ?
専門的なこと習えるし、同じように歌を歌ってる人がいればなんか嬉しいし、話も合うし」
「じゃあ何?」
蒼が立ち止まる。
蒼は背が高い。
だけど、こういうとき、蒼は腰を屈めて視線を私に合わせてくれる。
「バンドに誘われた」
「へぇ〜。すごいじゃん。よかったじゃん」
「よかったのかな?」
「だってその人は麻緋の歌を認めてくれたんでしょ?麻緋の声がいいって思ってくれたんでしょ?
褒めてくれたんでしょ?
よかったってことにならない?」
「そう……なんだよね」


