汚レ唄



「でも、ギターも必要でリズムを刻むならドラムとかベースのリズム隊も勿論必要になってくる。
そうやってみんなを必要としてバンドが組みあがるんだ。

ソロなら、一人で悩むところもバンドなら仲間で悩める。みんなで支えながら、個人じゃなくグループをもっと成長させようって思える。
ボーカル専攻にはわかりにくいかもしれないけど、俺が言えることは、バンドには……いや、俺のバンドにはお前の声が必要だってこと」




そんなに真っ直ぐ言われると少しくすぐったい。


私の歌を聴いて拓斗くんは必要だって思ってくれたってことだもんね。



「本当のこと言うと、俺、ボーカル専攻の友達、手当たり次第カラオケ誘ってんだよね。
今まで何十人と聴いてきて、なんか違うって思った。何様?って思うかもしれないけど、友達の歌聴いても今までこんなにピーンときたことなかった。俺はお前がいい。やるならお前じゃなきゃ嫌だ。そう思った」



返事はもっとよく考えてくれていいから。待ってる。
とまるで愛の告白に戸惑う少女に言うようなセリフを言った後、何事もなかったように拓斗くんは曲をドンドン入れだして歌いだした。




拓斗くんも歌うまいのに。

私はと言うと。



愛の告白ではないけど、新たな道が急にできて進むか進まないか……そのことで頭が一杯になってカラオケを楽しむことが上手くできなかった。