「俺、お前がいい。俺の第六感?ってゆーのがピーンときた。
お前、いや、麻緋さん、俺のバンドのボーカルやってくれ」
頼む!とそれまでよりももっと深く頭を下げる拓斗くん。
バンド……
バンドかぁ。
「ダメか?」
伺うようにして頭を下げたままコチラをチラっと見るその目はまるで捨てられた犬のような目で、ひしひしと訴えかけてくるのがわかる。
うっ……耳がしょんぼり垂れてるように見えてきた。
「ダメっていうか……その」
ゆっくりと話すその一言一言を聞き逃さないようにでも急かすことなく待ってくれる拓斗くんはやっぱり犬のようだと思う。
「私、バンドって考えたことなかったから」
そう。私はいつも1人で歌っていたから。
バンドってどんなものかもわからないし、正直戸惑う。


