「どこ行くの?」
「歌終わったんだったら、これからちょっとお出かけしない?」
「歌聴いてやったんだからサービスしてよ」
バカバカしい!!
歌なんて聴いてくれなかったくせに。
何がサービスだよ。
歌う快感なんてこの人たちのおかげですっとんだ。
ただ嫌悪感だけが残った。
「離してください」
「ヤーダ」
本当にここは柄が悪い。
しかも誰も助けてくれない。
振りほどこうとしてもほどけない腕。
寒気がした。
私、どうなるんだろう。
「何してんだよ」
声が聞こえたかと思うと掴まれて痛かった腕は解放されていた。
守るように私の前に立つ人。
その後姿はいつか見た広い背中と合わせかぶさった。
「蒼……」
「だから、ここはダメだって言ったんだって」
後ろを振り返って蒼は笑った。
だけど、本当は怖いんだってわかった。
少しだけ震えてる。
私の記憶が正しければ、蒼はケンカなんてしたことない。
だから怖いんだと思う。
「なになになになに?ボク〜?いきなりなんなの??」
3人のうち、1人が蒼の髪を乱暴に掴んだ。
「歌ってんだろ?邪魔すんじゃねーよ」
力強い声だった。
体は震えていたのに、怖さを微塵にもださないまっすぐな声。
「もう歌い終わったんだって。俺たちと遊ぶために」
まただ。
また笑う。
彼らの笑い方は無性に腹立たせる笑い方だった。


