汚レ唄



電車が入ってきたからか、またこのロータリーは人が溢れていた。


それぞれがそれぞれの道に慣れたように進んでいく。


帰り道だから慣れてるのは当たり前だけど。


通り過ぎる人が視線だけをこちらに向けて通る。


誰か立ち止まってくれないかな?

私の歌は誰にも届きませんか?




そう思ったとき、声をかけられた。


「君、何してんの〜?」

「バーカ、歌ってんじゃん」

「見たらわかんじゃん?」


髪を茶色に染めた3人組。


無視して歌っているとずっと私の前に座り聴いている。


聴いているというより、談笑してる。


歌なんか聴いてくれていない。


ギャハッハッハという3人の笑い声が歌う声にかぶさってくる。





歌い終わると3人は拍手をしてきた。

「いい歌だね〜」

なんて言ってまたギャッハッハと笑う。





聴いてなかったくせに。


悔しくて、すぐにギターをケースに戻した。




もう歌えない。


今日は諦めるしかない。


あと4曲歌いたかったけど、ダメだ。

その場から立ち去ろうとした時、腕を掴まれた。