「俺、麻緋の歌すっげー好きだし毎日でも聴いていたいんだ。だからファン第1号として聴きに行きたい。それじゃダメか」
「ダメです!!」
「けちー!!!!!」
「何と言われようがダメなものはダメ!!蒼はここにいなさい!!」
こんなときだけお姉さん面してる自分に少しだけど笑えてきた。
「心配だし、気になるし、聴きたい!!!!」
「蒼……あんまりしつこいと、“あの事"みんなにバラスよ?」
「ぅっ……」
“あの事"なんて、本当は何も無い。
だけど、昔から蒼はこの言葉をだされると黙ってしまうのだ。
「とにかく、今夜、こっそり抜け出して歌ってくる。蒼はここにいて、お母さんバレたときにフォローしといて!!お願い」
私は自分の顔の前に思いっきり手を合わせた。
パンっと高い音が蒼の部屋に響いた。
「……」
蒼は不服そうに上から見下ろしてくる。
「蒼。お願い……」
頭を下げると、上から溜息が小さく聞こえた。
「……わかったよ。その代わり、危なくなったらすぐに帰って来いよ」
「うん。ありがとう」
笑顔で頷くと、心配そうな蒼の瞳と目が合った。
「大丈夫だよ」
立ち上がり、蒼の無造作に作られた髪に声を落とし部屋をでた。


