開けば歌を歌いたくなるから。 声を出せば、歌いたくなるから…… だから必死に我慢してたんだ。 歌いたくて歌いたくてしょうがなくて、だから、涙目になってたんだ。 我慢してたから震えていたんだ。 原因がわかると、なんだか麻緋の全てがわかった気がした。 目の前でプロの演奏を聴いて、歌声を聴いて、歌いたくてしょうがなくなったんだと思う。 だけど歌えなくてずっと我慢してたんだ。 小さい体で大きな夢に向かってるんだ。 「麻緋、いくぞ」 俺は麻緋の手を再び握るとそのまま歩き続けた。