汚レ唄




俺は弟。


報われない恋をするのなら、俺は俺を好きだといってくれる奴を大切にしようって決めたじゃないか。





俺は手の平を麻緋の額に持って行った。



「熱はないみたいだけど。風邪気味だったら早く言えよ」

「大丈夫だから」

「ならいいけど。あっ、何か雑誌にヘアアレンジとかのってない?」




体が勝手に暴走しませんように。


以前、暴走して麻緋をギュッと抱きしめたことを思い出した。




もう、怒らせたくないから。


今日という日を楽しい思い出にしたいから。



俺は麻緋を喜ばしたいから。


麻緋の髪にそっと手を伸ばし、髪を結い始めた。









出来は上出来。


初めてにしてはなかなか才能あるかも。


髪をいじるなんて、自分の髪しかしてこなかったけど、麻緋の髪は俺とは違って柔らかくてフワフワしてた。


結ってる間、物凄く楽しくて、俺が麻緋を綺麗にするんだって想ってた。





人の髪を触るのって楽しい。


出来がよければ、それは笑顔で帰ってくるから。





麻緋の眩しい笑顔が俺の光になるように。




自分でもビックリしたけど、髪を触るのもなかなか悪くはないんだってそう感じた。