「しゃーない。謝るか」
俺は雑誌を床に置くと、隣の部屋に向かい、コンコンとドアをノックした。
「…………はい」
聞こえるか聞こえないかの小さな声を聞いて、ドアを開けた。
中は驚くほど汚く、ベッドの上に何種類かコーディネートされた形で積まれている。
「ったく、しょうがねぇ。俺が選んでやるよ」
「蒼が?」
怪訝そうに伺う麻緋。
俺のことを信用していないって丸解りだ。
そんなことずっと前から解ってたけどさ。
とりあえず、俺はお約束と言っていいくらい、ベッドの上を指差して
「きたねぇ」
と連呼した。
「うるさいよ。今日だけだって」
まぁ、確かに今日だけだろうけど。
いつもはこんなに散らかってるところ見たこと無いし。
俺は服の山を一枚一枚チェックして、麻緋に見合いそうな真っ白いワンピースを投げた。
「麻緋は、こういう清楚なお嬢様系がいいんだって」
「ワンピースにこのベルト巻いて、この前買ってきたサンダルはいて……」
ワンピースを麻緋にあてがって、全身をチェックする。
似合う。
「一回着て見て」
「う、うん」
そのまま麻緋は俺の部屋に行き、服を着替えてきた。
「蒼?どう??」
「いいじゃん」
やっぱりいい。
真っ白の肌がよりしっくり合ってる。
一面的な白のワンピースがベルトをすることでアクセントになる。
「麻緋は色白いから、派手に露出するより適度な露出のほうがしっくりくるんだよ」
そっと麻緋の髪に触れる。
柔らかい毛。
「髪はトップをちょっと遊ぶくらいでいじったらいいと思うし。どうよ?」
「いいのはわかるんだけど、コンサートだし、しかもあのバンドってロックだから、この格好じゃちょっと浮いてしまわない?」
「……あ〜、そっか」
真っ白のワンピースはよくよく考えると俺の欲望だったかも。


