時間になると、ステージにある真っ白なスクリーンにマークが映し出された。
バンドのロゴマークが映り、それに気づいたファンが「キャー」っと悲鳴に近い歓声をあげる。
次に映ったのは、スタジオで練習中なのかメンバーたちが、笑ってふざけあったりしてるシーン。
メンバー1人1人がホームビデオのように挨拶をしていく。
「今日と言う日を忘れられないくらいいい日にしてやるからな」とか、「みんなに会えるのが楽しみ」とかカメラを通じてこちら側に訴えかけてくる。
ドキドキ。
最後にボーカルが
「めーいっぱい楽しもうぜっ!!」
と叫ぶと同時に、ドラムの音が激しく鳴り出す。
スクリーンに集中していた瞳をスクリーン下のドラムセットに向ける。
力強いドラム。
一気に歓声が響く。
そして、ドラムのリズムに合わせるように、今度はベースがステージ脇から出てきてリズムに交じり合う。
ベースが加わることでリズムに深みが増すようで。
キーボードが加わって力強いリズムだけど、どこか繊細に聴こえるようになった。
そしてギター。
「ギュィイイイイン」
と、感情を高めるように唸らしたかと思うと、
すぐにボーカルの男らしい魂の歌声が会場を包み込んだ。
一瞬にして空気が変わった。
誰もが彼らに魅了されている。
「……スゲー」
音楽にさほど興味もない蒼でも彼らに釘付けになっている。
テクニック、心の叫び……
彼らはそれを持っていたけれど、もう1つ重要なものを持っているんだと思う。
“カリスマ性"
多分、テクニックだけじゃ、プロにはなれない。
声がよくてもプロにはなれない。
大勢を惹きつける魅力、カリスマ性をもっている人がプロになれるんだ。
私もいつか……いつかあんな大きなステージに立ってみたい。


