汚レ唄





何処かのドラマのセリフのような言葉。

だけど、彼女に優しくするのは当たり前のこと。


それをきいてどうしたいのか。

それをきいてどうするのか。


自分のことなのに、私自身何もわからなかった。




「……彼女?」


蒼は言葉を確かめるようにゆっくりと繰り返した。


「そうだよ。彼女、中峰?さん????」

「あ〜」

この反応はもしかして彼女じゃないのかな?

なんか少しだけホッとしてる?

なんで?



弟が私より先に恋愛するなんてっていう気持ちがあったとか?

弟に負けたとか思ってたり?




よくわかんない。


「俺は彼女にだけ優しいわけじゃないから。みんなに優しいんだよ」

イタズラに白い歯を見せて笑う蒼。

彼女がいることは否定しないんだ。



あれ??

なんかムカムカする。


私も“みんなに”の中に入ってるんだ。


「特別な人には特上の優しさを!それ以外には並みの優しさをでいいんだよ」

「なんで?みんなに同じくらい優しいほうがいいじゃん」

「蒼はそれでいいかもしれないけど、勘違いする人はするんだから、最終的には彼女が傷つくことになるかもしれないんだから」

「それは、なんかの漫画の影響?」



……最終的に傷ついてるのは私なのかもしれない。


変に優しくされて、少し勘違いしたのは事実だった。


誰にでも優しいなら優しくしてほしくない。なんて、やっぱり漫画の中のセリフみたいだ。



「そう、この前読んだ漫画に載ってたんだ」

蒼に貰った白いタオルで汗を拭くようにそっと目元を隠した。



多分、今情けない顔してる。


だけど、そんな顔蒼には見られたくなかった。