汚レ唄



腕にはめた時計の秒針がチッチッチッチと時を刻んでいく。


ワクワクワクワク。



おかげさまで私たちは6列目に場所をとることができた。



物凄くよく見える。


ステージは全面的に黒く、真ん中にセットされているドラムがとてもキラキラと光って見えた。






「麻緋、暑くない?」


屋根も無い。

強い日差し。


日焼け止めクリームを入念に塗ってきたけれども、ジリジリと肌が焼けそうだ。



「暑いよ。当たり前じゃん」


みんな暑いよ。

当たり前じゃん。



「麻緋、目つき悪くなってる」



蒼は暑くないの?って思いたくなるほど蒼は爽やかに笑っていた。



「こんだけ暑けりゃ目つきも悪くなるって」


言い終わるか終わらないうちに目の前が白くなる。



「わっ」

「これ、頭にのせとけ」


乱暴に乗せられた白いタオル。

頭にかぶせて少しでも陽射しから避けるようにと蒼が乗せてくれたもの。



「あんたはいいの?」

「いいのいいの。だって俺、男の子だもん」

「でも、男の子でも暑いものは暑いでしょ」

「俺が誘ったんだし、いいの!!」



蒼は真っ青な空を見上げて額に流れる汗を拭った。


だけど、拭いきれていない汗が首にまできれいな線を描いて流れていく。


「蒼、汗」

蒼に乗せてもらったタオルの端で首にまで流れた汗を拭う。


「いいって!!そんなことしたら、このタオル汗臭くなって麻緋の日よけにならないし」

「あんたがそんな心配しなくてもいいの」


蒼は大切にしてくれる。


そんな事しなくてもいいのにって思うくらい大切にしてくれる。


私が望むことを、蒼のできるだけの力を使って叶えてくれようとする。



なんでなんだろう。


どうしてこんなにも尽くしてくれるんだろう。





「彼女にも優しくしてるの?」

気付けば、そんな言葉が口から出ていた。