汚レ唄



「コレとコレとコレに載ってたと思う」

「ちょっと借りるね」


蒼は鼻唄交じりに雑誌を受け取ると、ペラペラとアレンジ法の載ったページを探し出した。



「蒼、できんの?」

「したことないけど、できそうな気がする」

「え?」


まぁいいからいいから、とクッションの上に座らされ、あとはされるがまま。

だけど、出来上がりを見た瞬間、ビックリした。


だって、雑誌そのままだったから。



「ピンとかは店にあったし、アレンジ法をまんま実践したら結構できるもんなんだな」



蒼は簡単そうに言うけど、雑誌を真似るのは実はそう簡単なものではない。


私だって、何度も挑戦してきたけど、毎回、腕がもっとあれば……なんて思いながら断念した。


それを、今迄したこともないアレンジを簡単にするなんて。


それに、よく見ると、蒼はセンスが良かった。


何処で培ってきたのかまったく解らないけど、気付けば、蒼の持ち物は全て蒼のために作られたものなのではないかと思えるほど蒼のぴったりだった。



そして、蒼が選んでくれた服も、私らしくて自分で選ぶよりも私らしかった。



蒼はニッカと笑うと、雑誌を片付け、未だに散らかりっぱなしだった服を片付けた。




「じゃあそろそろ用意して行くか」

「え?」

「早く行かないと近くで見れなくなるもんな」

「うん」



蒼はなんだかとっても優しい。


弟なのに、なんだかとっても優しい。







私たちは準備をして電車に乗った。