「蒼!!」
麻緋の透き通るような声。
一瞬ドキッと胸が躍る。
「なに?」
麻緋のいる2階を見上げるとちょうど太陽が眩しく輝いていて、つい眉間にしわが寄ってしまう。
「いってらっしゃい」
「え?」
まさか麻緋が声をかけてくれるなんて思ってなくて、ずいぶん間抜けな声がでてしまった。
「だから、いってらっしゃいって言ってんの」
不機嫌にそれだけ言うと窓をぴしゃりと閉めてしまった。
「……ハハハ」
あの麻緋が!
この俺に!!
行ってらっしゃいだって!!
……行ってやろうじゃないの!
学校だろうが、灼熱地獄だろうが、どこへだって行ってやる!!
誰がなんと言おうと男は単純なんだから!!
麻緋が一言声をかけてくれるだけで嬉しくて嬉しくてなんだって出来る気がする。
今日はなんだか良い日になりそうだ!!
こんな暑い中、汗だくで、俺はスキップしながら学校に向かうのだった。


