「前から思ってたんだけど、蒼はコロコロコロコロ彼女変えすぎだよ。今はさ、仕事に集中してみたらどう?」
「麻緋みたいに?」
麻緋は、今の仕事に満足はしていないらしい。
濃い化粧をして、わざと無愛想に演出して……
ありのままの自分をファンのみんなに見せられないのが辛いとぼやいていたことがあった。
だから、今の俺の言葉は、生意気に説教垂れてる麻緋に嫌味。
苛めたくて嫌味。
グイッと酒を飲み干してから麻緋をチラリと見ると、涙目になって、だけど泣くのを我慢して必死に唇を震わしていた。
この顔。
この顔が見たかったんだ。
俺を悪者にしたくなくて、だから必死になって涙を我慢する。
俺のためを思って。
……やっぱり、お前は何が何でも手に入れたい女だ。
我慢していても、堪えられずに溢れ出した涙を親指の腹でそっと拭って舐めた。
相変わらず、しょっぱい。
「何泣いてんの?」
「泣いてないもん」
「泣いてんじゃん」
再び溢れ出した涙を指で拭う。
「蒼が意地悪言うんだもん」


