俺を初めて振ったのは、お前。
幸せそうな顔してカクテルを飲んでるお前だよ、麻緋。
「なぁ、麻緋?」
「うん?」
「俺ら、付き合おっか」
「…………え?」
一瞬、麻緋の顔が固まった。
……そんなに俺と付き合うの嫌なのかよ。
何年たっても
何十年一緒にいたって
お前の返事は変わらないんだな。
「……嘘に決まってんじゃん。
麻緋と俺って……普通にありえないだろ」
「……そうだよね。ありえないよね」
俺も言ったはずの『ありえない』という言葉が、なぜか麻緋に言われると胸がえぐれるように傷む。
はぁ〜。
何年も何年も、この繰り返し。
いい加減進歩ねぇな。
渇いた笑顔にカランと鳴る氷の音。
「ねぇ。蒼?」
「ん?」
「もうそろそろさ、いい加減落ち着きなよ」
「…………は?」
俺の機嫌が悪くなっていったのを察知してか麻緋の声がだんだんと小さくなっていく。


