「誘拐しちゃった」
斜め前のキミが振り返ると、まだ、少しだけほんのりと赤い顔。
なんだろう。
そんな顔見たら、私まで顔が赤くなっていくのが分かる。
「これって誘拐?」
静かに私の笑い声が響く。
誰もいない公園。
公園の周りにすら、人の姿はない。
ずっと前に2人で来た公園。
あの時は、こんなことになるなんて、思ってなかったな。
「ブランコ……やらない??」
「あっ!じゃあさ、靴飛ばしやらない?私、靴飛ばし得意なんだ♪」
「ほー、靴飛ばしキングの異名を持つ俺様に良い度胸だな」
「キャラ変わってるから」
「猫かぶりはやめたの。おニューな俺、どうよ?」
「違和感」
「……だろうね。
だけど、これが俺だから、陽菜ちゃんには俺の全部知って欲しいなって思ったんだよね」
「え?」
カバンをベンチに並べて置く。
2つのカバンがくっついて少しだけ祐君のカバンにもたれかかる。
「ブランコブランコ♪」
スキップでもしそうな勢いで、先にブランコへと走る祐君。
私はそんな彼の後姿を目を細めて眺めた。
スキップする度に風になびく髪。


