テーブルの端に置かれた醤油を取るために長く伸ばした腕を見て、ドキドキし
相変わらず止むことのないシャンプーの香りに脳はとろけるようで、
隣から聞こえる低い声音は深い海の底を連想させる。
時折触れる腕と腕が心をジュッと熱くさせる。
もう料理の味なんてわからないほどに、私の頭の中はお兄ちゃんで一杯になる。
お兄ちゃんは私のことなんて妹にしか思っていない。
そんなことはわかっている。
だけど、何年たっても、何十年想っていても、この気持ちに終わりなんて来なかった。
他の人をなんて思ったことがなかった。
「さってと、宿題あったんだったっけ」
頭の中はお兄ちゃんでいっぱいなのに、何事もないように空になった食器を持ち席をたつ。
自分の気持ちを隠すことなんてもう慣れた。
大好きで大好きで仕方ないけれど、言っちゃいけない人がいる。
誰も許すことのない恋。
その結末は悲しいものだってわかってる。
でも、心の中で想っているだけならいいでしょ?
想い続けてもいいでしょ?
もし、想うこともいけないと言うのなら、あなたは鬼だよ。


