汚レ唄



「これ、……は、もう大丈夫だから」

見かけは痛々しいけど、だけど、もう痛みはないから。




「これ、ご飯……」

お母さんがご飯の用意をしてくれた。


昨日の私の分のご飯。




「ありがと……」

「じゃ、お父さん行くから、今日はゆっくり寝てたらいい」


それだけ言うと、お父さんは出て行った。



テレビの音も何もない。

エアコンの音だけがリビングを駆け抜ける。




お母さんは何も話してくれない。


怒ってるんだ。


私も、無言でご飯を食べる。




なにも言うことができない。


結局、ご飯を食べ終わるまで、一言も何も話さず、私は自分の部屋へと向かう。



お父さんは休んでもいいって言ってくれたけど、那智に行くって言ったし、心配かけたくないし、
それに、放課後は祐君と会うから、休むことはできなかった。






クローゼットの中をゆっくり開け、衣類ケースの奥を探す。


この辺りに、あるはず。




お下がりの制服。



いざもらったときは、使う事なんてないと思ってた。



だけど、持ってて損はない。


むしろ、持ってて良かった。