玄関には、思ったとおり、隅においてある、見慣れない女物の靴。


ここに、恵さんもいるんだ。






だけど、今は、お母さんだ。


お母さんの背中を見つめ、後に続いて歩いていると、目が熱くなった。





だって、お母さんの服……昨日と同じだ。


髪もぐしゃぐしゃで……

多分、ゆっくり寝てないんだろう。


心配して寝られなかったんだろう。







「……お母さん、ごめんな、さい」

こうやって謝るのって何年ぶりだろう?


もう何年も謝ってなかったと思う。




お母さんはコチラを見ようともせず、リビングの扉を開けた。



そこには、仕事に出る前のお父さんの姿があった。


「陽菜……」

「お父さん」


お父さんは、私の頬を見ると、顔を歪ませ不自然に笑った。



「おかえり。早く、ご飯食べなさい。今日は学校休んで良いから」

あまりにも優しい声で、喉の奥に力が入り、目からは涙が溢れ出た。




「……昨日は、ごめんなさい」

心配かけてごめんなさい。



「もういいから。お父さんも悪かった。……こんなになる程強く……」