この時間、さすがに親は起きてるだろう。
怒られるだろうな。
また……叩かれるのだろうか。
私は頬に手を当てた。
那智の家を出る前に、那智のお母さんがわざわざ起きてくれて、頬の手当てをしてくれた。
腫れてる部分を上手く隠してくれた。
また叩かれるのはヤだな。
あの時は、胸の痛みも加わって、痛さが倍増したのかもしれないけれど……。
当たり前だけど、叩かれるのは痛い。
……なんて言ってらんないよね。
いつまでも逃げてられないし、謝らなきゃだめだし。
ふーっと玄関の前で深呼吸をしていると、突然、『ガチャ』っと扉が開いた。
不意打ちを食らったようにビクッと肩を震わせ、その人の顔を見る。
その人は、目にうっすら涙を溜め、唇を震わせていた。
「……ひ、なっ!!」
「……お、母さん」
お母さんは私の顔を確認するなり、目をつり上げて、口をへの字に曲げた。
……やばい。怒られる。
「……心配、したんだから」
「はい……」
「とにかく、入りなさい」
……あれ?怒られない??


