次第に見慣れた景色へと変わっていく。
「はぁー」
窓に息を吹きかけて白く曇らせ、その上に指を滑らせる。
まぁるい円を描いて、その中に点を2つ描き足す。
それから円の外に更に小さな半円を2つ……
はい、クマのできあがり♪
だけど、そのクマもすぐに消えてなくなってしまう。
あーぁ。
自信作が……。
無残にも消えていくクマに虚しさを感じる。
「……はぁー」
再び同じところに息を吹きかける。
すると、さっきのクマがうっすらと姿を表す。
また……会えたね。
そして、またクマは姿を消す。
誰かが、この窓に息を吹きかけたら、また、クマは表れる。
不死身のクマ。
クマさん、また別の人がキミを映し出したら、その時は、その人の笑顔を作ってあげてね。
キミが幸せの種になってあげてよ。
クマがいた場所に願いを込めて。
私は立ち上がった。
ここが私の降りる駅。
なぜ、こんな時間に?とでも言いたげに不思議そうな顔をする駅員さん。
改札を通る音が虚しく駅に響く。


