「なんで、そんなこと言えんの?何を根拠に?!あんたは……心配にならないの?“もしも”を考えて怖くならないの?」
『傷を、手当したとき見たんだけど、手首に……深く何度も切った傷と、その周りに“ためらい傷”があったんだよね』
「ためらい傷?」
『そのまんまの意味なんだけどさ、死のうと思って手首を切ろうとするじゃん。
でも、それでも、切るのをためらって深く切れなくて、うっすら切った傷のことをためらい傷って言うんだよね』
「それが陽菜の手首に?」
『もしかしたら、本人は気付いてないかもしれないけれど、いくつもためらい傷があった。
だから、きっと本当は死ぬ気なんてなかったんだと思う。
だから大丈夫だよ。陽菜ちゃんは死なない。
だけど、問い詰めたり、逃げ場を取り上げることで、陽菜ちゃんの精神が不安定になったら、“もしも”のことになるかもしれない。
だから今はそっとしててあげてほしいんだ』
「……そう。
それで、私は、何も聞かずに陽菜を今晩泊めればいいのね?」
『さすがに俺の家に一泊って言うのも……ねぇ?』
「そりゃそうだ」


