「その人を傷つけることもたくさん言った」
彼女を傷つけて、
おなかにいる赤ちゃんにも汚い言葉を浴びせた。
「自分を傷つけたりもした」
1人の夜が怖くて、自分が嫌になって、自分自身を傷つけた。
「大して知らない奴にすがりつこうとしてた」
誰でもよかった。
だけど、好きって気持ちは消える事なんてなかった。
「那智……わたし、どうすればよかったのかなぁ?」
あふれ出す涙は終わりを知らず、幾重にも流れて枕を濡らす。
視界がぼやけて那智の顔はもう見えないけれど、那智は、こんな私をどう思った?
「私の……好きな人、は、お兄ちゃん……。私のお兄ちゃんだった」
汚いって思う?
おかしいって思う?
友達やめたいって思った?
だけど、那智が発した声は微かに震えていた。
「陽菜、ばかだよ。あんた、私をなんだと思ってたの?」
那智も、泣いてるの?
私のために泣いてくれてるの?


