「ごめんね、那智」
そらすことのできない那智の強い目を見ながら、私の目からは気付けば、涙で溢れていた。
「わ、たし……那智に…、言ってない気持ちがあったんだ」
鼻水がでて、唇が震えて、何を言ってるのか分からないかもしれない。
でも、言うね。
だから聞いて。
「私ね、ずっとずっと好きな人がいた」
「うん」
「……その人は好きになっちゃいけない人で」
「……うん」
「その人が私の全てだった」
私の人生、お兄ちゃんがいない日はなかった。
「たとえ、私のこの気持ちが世間で許されない気持ちだとしても、私はそれでもよかったんだ」
汚いと罵られるのは私だけでいい。
それでよかったのに。
「でも、いつからか……。
その人が自分のことを見てくれないと嫌になってたんだ。いつからか、私はその人の心も求めるようになってた」
お兄ちゃんが笑ってくれればそれでよかったのに。
彼女の存在を知って、私は余裕がなくなってた。


