カバンの中もポケットの中も一応探してみたけれど、見つからない。
祐君のいうように車の中に落としてしまったらしい。
「私、ちょっとリビング行ってくるから、その間、返事打っといて」
那智は携帯をポイッと投げ捨てると、髪を拭いていたタオルを肩にかけ、そのまま部屋から出て行った。
私は、携帯を見つめながら、人の携帯を見てしまう罪悪感に駆られながら、メールのボタンを押す。
そして、新規メール作成にし、文章を打ち込んだ。
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『To:祐君
件名:陽菜より
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内容:那智の携帯を借りました。携帯、探してたんだ。教えてくれてありがとう』
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本当はもっと言いたいことがあったんだけど、それは、自分の携帯で送ることにするよ。
「陽菜〜?送った??」
ドアを蹴破るようにやってきた那智の手には、手乗りサイズの丸いみかんがコロンと乗っかっていた。


