誰かが言っていた。
『神様は、その人が乗り越えられる壁を用意する』のだと。
ということは、私のこの気持ちもいつかは乗り越えられるものなのかもしれない。
でも、乗り越えたのなら、それはどんな結果になるのだろう?
他の人を好きになってる?
それとも、私の気持ちは伝わってる?
どちらにしろ、あの人を困らせることならば、私はそんな壁、上らずに壁を壊して真っ直ぐ突き進んでいたい。
あの人の幸せを奪うような幸せ、わたしは認めない。
そんな幸せならいらない。
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『ガチャン』
玄関の扉を勢いよく閉める。
何事もなかったようにお兄ちゃんはスタスタと歩き、リビングを無視して階段を上る。
私は、そんなお兄ちゃんとは違い、リビングにいるお父さんとお母さんに
「ただいま」
と声をかける。
「おかえり~。今日は遅かったのね」
お母さんが、リビングのソファーから顔を覗かせる。
「カラオケ行ってきたから」
お母さんの近くにカバンを下ろし、カーペットによっこいしょと腰を下ろした。


