その紙には、こう書かれていた。
『陽菜の親だけど、かわる?』
“うん”と言う代わりに大きく頷いてみせ、那智から電話を受け取るのを待っていると、区切りよく終われないのか、なかなか変わる気配が感じられなずに数分が経過した。
「え?“陽菜は大丈夫か”って??」
私のことを忘れたかのように那智も電話を離さない。
もう少しかかりそうならと敷いてもらった布団の上に座り、荷物の中から携帯電話を探した。
祐君にもお礼をいわなきゃ。
ゴソゴソと鞄の中や服のポケットを探す。
と、そのとき、大きな怒鳴り声が部屋を包み込んだ。
「大丈夫なわけないでしょ!!
陽菜の頬、真っ赤に腫れ上がってるんですよ?!あんなになるほど強くぶつ人、どこにいるんですか!?」
「ひぃっ」
那智の怒鳴り声に驚いて、思わずビクッと肩が震える。
「…………あ」
那智は、しばらくしてから、私の肩に手を置き、
「切っちゃった♪」
って、那智のお母さんそっくりの笑顔でニッコリ不気味に微笑んだ。


