汚レ唄


階段をのぼり、ネームプレートに『NACHI』と書かれた部屋の前までくると、中から那智の声がくぐもって聞こえてきた。



「……ということで、今日はうちに泊まらせますから」


……もしかして、親に連絡してくれてる?



あぁ……そういえば、全然連絡してなかったや。


出かけるときも、ばれないように静かに出て行ったし、それから今まで、電話すらしてなかった。


心配してるだろうなぁ。




ちゃんと向き合わなきゃ。

それで、明日、家に帰ろう。




そう決心して、私は部屋の中に入った。


6畳の部屋には2人分の布団が床に敷かれていた。


那智は、私が入ってきたことに気付くと、ゆっくり微笑んで、紙に何かを書き始めた。








「……えぇ。……はい。…………はい」


紙に何かを書いてる那智の返事は、かなり適当な言い方で、

確か、那智と電話をしてるとき、こんな返事を聞くことがよくあった。




そのときも、こうやって、なにか別のことに集中してたのかもしれないな。



一生懸命書いた紙をコチラに手渡すと、那智はニッコリと微笑んだ。