「陽菜ちゃん、今日は那智さんのところに泊まりなよ。俺、話つけといたからさ」
話?
一体いつ、そんな話をしたんだろう。
「ありがと、でも……」
「帰りたくないんでしょ?」
なんで、この人は私の考えが全部わかってしまうのだろう。
そんなに私は顔に出るタイプではない。
でも、祐君には全てが筒抜けであるようにわかってしまう。
甘えてもいいのかな?
これ以上、また甘えちゃってもいいのかな?
「おっと、これからお友達の家に行くのかい?
だったら、おじさんが送ってってやるよ!!こんな時間にお嬢さんが出歩いちゃ、危ないからね」
とお父さんの声。
私、祐君だけじゃなく祐君の家族の人みんなに迷惑かけてる……。
「でも……」
断るつもりだった。
こんな時間と言ってもまだ8時前だし、こんな時間に出歩いてる人だってたくさんいるだろうし、那智の家はここから、かなり遠い。
車で送ってもらうなんて、そんなこと出来るわけがない。


