そんな時、ドアにかけられたイルカの小さな絵が揺れた。
ひょっこり顔を除かせたのは、祐君。
そうか……。
この香りって祐君の香りだ。
で、ここは祐君の部屋。
私、……は、
また手を切って、……で、ごめんねを言うつもりでココに来て、意識を無くしちゃったんだ。
ってことは、あの暗闇は夢だったのかな?
お兄ちゃんの言葉も、祐君の言葉も……
夢だったのかな?
「起きた?」
こんなに迷惑かけたのに、キミは相変わらずニッコリ優しい笑顔を投げかけてくれるんだね。
「祐くん。ごめんなさい」
祐君が笑顔でコチラに近付いてくるから、ゆっくりと私は起き上がった。
まだ少しクラってするけど、腕で支えて何とか座る。
「何で謝るの?」
「だって……いきなり寝ちゃったし。
ベッドまで運んで寝かしてくれたし……」
ボサボサの髪を手でとかすために左腕を上げて髪を触る。
……服の裾からチラリと白い布が見えた。
リストバンドなんかじゃなくて、白い包帯が綺麗に巻かれた左手首。


