汚レ唄



しばらくして、隣のお兄ちゃんを見ると、今度は最近のお兄ちゃんの姿になっていた。




「……お兄ちゃん」

「陽菜……」



お兄ちゃんの寂しげな笑顔は消えることもなく、静かに呟くような声だった。



「ごめん。陽菜……ごめん」

「なんで……なんで、お兄ちゃんが謝ってるの?」



お兄ちゃんは俯いて、ゴメンしか言わない。



なんで?
お兄ちゃん、何かしたの?








「本当は……全部、知ってた」

「え?」


「お前の気持ち、知ってたんだ。だけど、それに応えることは出来ないから。

だから、ごめん」



お兄ちゃんは立ち上がると、前を歩き出した。



それに伴って、光のスポットライトはお兄ちゃんを照らし続ける。


「お兄ちゃん!!」


お兄ちゃんは振り返ると、変わりなく寂しい瞳で口を開いた。








「もし、陽菜が……俺の妹じゃなかったとしても、俺は陽菜を好きになることはないと思う。
また恵を好きになってた」



「なんで!!!」



なんで、そんなこと言うの??


なんで……



そんな意地悪言うの?