いつものように家に帰ると、女物の靴があった。


また、アノ人が来てる。


私の苦手な人。

適わない人。

むしろ敵。




やだなぁ~。

あの人が来たら、お兄ちゃん、ずっと機嫌いいけど、
だけど、それは私が機嫌よくしたわけじゃなくて、あの人の力だから。


お兄ちゃんがあの人のことを、どんだけ好きか突きつけられてるようで嫌。


だからってあの人のことを嫌がるのはおかしいってわかるけど、
今はあの人を嫌うことでしか自分を保てないんだ。






「──……大人だから……賛成だけど………………いい……」


リビングからお母さんの声が聞こえる。



コーヒーの香りもする。


あの人はここにいるんだ。今日はリビングなんだ。



そうやって、あの人はじわじわと私の居場所を奪っていく。


自分の陣地へと取り込んでいくんだ。





リビングに入れずに、ドアの前に立ち尽くしていたら、突然、ドアが開かれた。


「突っ立ってないで入ったら??大事な話あるから」