「だから、もう1回聞くよ。
綺麗な景色を見てますか?」
綺麗な景色……
雨上がりの虹
滴り落ちる朝露
鮮明な空色
心地よい風
キラキラ輝く水面
それは、いつ、私が教えただろう??
いつ??
思い出せないのがもどかしい。
なんで覚えてないんだろう。
祐君は空を見上げるのをやめると、地面の砂へと視線を落として、小さく呟いた。
「僕は陽菜ちゃんの言葉で救われた。だから、今度は僕が陽菜ちゃんを救いたい」
それは本当に消えていきそうなくらい小さな声で、聞き取るのがやっとだった。
だけど、ハッとしたように、一気に顔を上げてこちらを向いて笑う祐君は、さっきの呟きが嘘のように楽しげな話し方になった。
「キミの心の中に大切な人がいることはわかってるよ」
「……なんで」
口は笑ってるのに、瞳がとても寂しそうに見えた。


