再び流れた沈黙を破るのはやっぱり祐君だった。
「ねぇ、陽菜ちゃんは、綺麗な景色を見れてる?」
「え???」
「ずっと気になってたんだ。
雨上がりの虹を教えてくれたのは陽菜ちゃんだった。
朝顔に流れる朝露を教えてくれたのも陽菜ちゃん。
空がこんなに鮮やかで、風が気持ちいいことを教えてくれたのも陽菜ちゃん。
光が水面に反射してキラキラ輝いている景色を教えてくれたのも陽菜ちゃん。
世界がこんなに綺麗だって僕に教えてくれたのは陽菜ちゃんなんだよ。
だけど、今の陽菜ちゃんにはそれが見えてないような気がしたんだ。
うまく言えないけれど、なんか……ギリギリな感じがするんだ」
「……ギリギリ?」
そんな風に見えたんだ。
ギリギリ……確かにそうなのかもしれない。
今の私はギリギリの上にたっているのかもしれない。
先の見えない想いは自分の首を絞める。
気がつけば四方八方に囲まれた壁。
行き場を失う想いは自分自身を失う。
上を向いて歩くことすら忘れてしまうほどに。


