「……えっっと…」
何か言いづらそうな祐君。
私は何も言えず、祐君の言葉を待った。
「その……」
「陽菜ちゃん、もう行こうよ。遊ぶ時間なくなっちゃうし」
何かを言いかけた祐君の言葉を途中で奪ったのは、この時間についてこれなくなった名前も知らない男。
その男は私の手首を掴んで引っ張っていこうとした。
「…っいた!!!!」
掴まれたのは左の手首。
切った跡が今でも残っている。
消えることのない傷だった。
だけど、この傷はお兄ちゃんを愛した証だから。
愛の形を残せて私は後悔していなかった。
だけど、さすがに力強く掴まれたらものすごく痛い。
私の叫び声を聞いた祐君が慌てて男と私の間に入った。
「ちょっ、ちょっと!!陽菜ちゃん、痛がってるじゃないですか!離してあげてください」
「え?俺、何にも力入れてないから痛くないって。大袈裟なんだよ、この子」
更に力を強めて男は平気な顔で笑ってる。


