「ご機嫌だなー、枢。」

結城は呆れ顔で俺をみているけれど、とうの俺は多分笑顔なんだろう。

「結城、実は瀬戸さんと知り合えた」

結城は目を一度見開いたがおかしそうに笑った。

「なんだ。それで珍しくそんな機嫌いいのか」


「なんだよ。いつも不機嫌みたいな言い方すんな。」




「てかお前、球技大会のことで先生に呼ばれてたよな?早く職員室いけよ。」

あ、すっかり忘れてた。

「あー、やばい。早く行かないと怒られるな。」

席から立ち上がり早足で職員室へと向かう。

職員室に向かう途中自然と一年のクラスを通って行く。

自然と瀬戸さんの姿を探す。
だけれど、瀬戸さんの姿は見られない。

こう都合よく会えるわけないか。

一年の廊下を通り過ぎ、各教科の倉庫教室の前を通り過ぎれば職員室。

そのときに声が聞こえた。




「好きなんだ。瀬戸ちゃん、付き合ってくれないか?」



人が少ない階段下から声が聞こえた。
それも瀬戸さんの名を呼ぶ男が。

足音を抑えて近くまで行くと瀬戸さんと、知らない男が向かい合わせに立っていた。


「…嘘だろ」

そっと覗き込むと瀬戸さんは気まずそうに相手を見ていた。

「…ありがとうございます。でも私には彼氏がいますから」

その瞬間俺の体から力が抜けていく。

瀬戸さんに彼氏がいる?
…あんなに可愛いから彼氏がいるのは当たり前か。
俺は何を浮かれていたのだろう?

「でも、昨日喧嘩してたよね?もう、距離を置こうって言われてたよな。」

「…言われました。でも、私は彼が好きだから。また今日話をするつもりです。」

「無理だよ、あいつ新しい彼女が出来た」

「…」

瀬戸さんは今にも泣き出しそうにしていて下に俯いていた。

「俺は瀬戸ちゃんのことを傷つけない!だから…だから、考えてくれないか?」

「お取り込み中失礼ですが、すでに瀬戸さんを傷つけてますよ」

俺はにこりと笑ってその男の前にたつ。

瀬戸さんを背中に隠して。

「誰だ、お前」

「俺は1年の神田枢です。先輩ですよね?好きな女の子だったらもっと優しくしたほうがいいと思いますよ。」

先輩は、俺のことを睨むとそのまま離れていった。