気が付けば、今年も残すところあと1ヶ月。

 25日までまだ20日以上あるというのに、クリスマス一色に染まった世間は確実に浮き足立っているとしか思えない。

 僕──真秀十流[マヒデトオル]のバイト先であるケーキ屋も同じ。

 ハロウィンの飾りを片付けたかと思えば、翌日にはクリスマスツリーが店のど真ん中を占拠した。

 続々と増えていく店内のクリスマスの飾り。

 店の外壁や植木を彩るキラキラのイルミネーション。

 手作りクッキーの形もクリスマスを意識したモノに変わり、クリスマスケーキの予約も始まった。

 バイトの身である僕にも予約ノルマがあるものだとばかり思っていたけど、数量限定な上に完全予約販売という宣伝文句が効いているのか、あっという間に完売。

 それほどまでにここのケーキは人気がある、という証拠なんだろうか。


「──十流!」

「……っ!? ぁ、はいっ!!」

「ボケっとしてんな。とっととコレ運べ」


 たまたまお客さんが居ないからって、怒鳴ること無いのに。