「先生、聞いて」 別にわたしは先生を好きじゃないし。 付き合えない理由だって、たくさんある。 『なに?』 静かになった病室に響く わたしの呼吸。 「…あのね、わたし。婚約者がいるの」 視線を絡めて。 逸らさず ただ…先生を見つめて。 『んなの知ってるけど?』 「…は?」 先生はわたしから視線を外さずに、言葉を続ける。 『キスに、感情なんて入ってないしね』