私は雨女だ。

 ひそひそと聞こえてくる《雨女》の言葉に、胸が痛くて悲しいけれど、泣くわけにはいかなくて、私は堪えた。

 泣いたら、もっと雨が降ってしまう。

「暇だから、廊下でサッカーしない?」
 教室のドアから男子に声をかけたのは、隣のクラスの川端くんだ。

 背が高くて、いつもにこにこしている素敵な笑顔の彼が、私は好きだった。

「先生に見つかったら、怒られるでしょ」

 クラスの男子が言うと、

「怒られても良いから、サッカーしようぜ」

 やる気満々の川端くんは、怒られるのは平気なようで、「やろう」と声をかけている。そんな彼を遠目で見ていると、不意に目が合って、私の心臓がどきんと音を立てた。

 恥ずかしいと思ったとき、

「あー、熊谷」

 川端くんが私を呼んだ。


「熊谷って雨女なの?」