いのり




「オムライスとかそんなもんしか作れないけど…いい?」

『あ、うん。手伝う』

「あーいいって。手伝わせるために呼んだんと違うし。座っててよ」


真剣な背中でハルにそう言われてしまったので、
仕方なくあたしは上げかかった腰をおろした。


袖をまくって一生懸命料理をしているハルの後ろ姿が、
なんだかほほえましかった。



「なんでこっち、引っ越してきたん?」

『…なんとなく、かな』



あんたを殺すためだよ。


なんて、
口が裂けても言えない。


「へぇ」


『…あたし、親いないし』

「…ごめん、変なこと聞いて」

ハルはわざわざ手を止めて、目を見てあたしに謝った。


『平気、慣れてるし』


「……慣れとかあんの?」


『…え』


真顔でハルが聞いてくる。


『……どうだろ。あたしは、親が嫌いだったから』


「…そっか」


ハルは目線を手元に戻した。