いのり




「…あのさ」


部屋に戻ろうと後ろを向くと、
彼はあたしの腕をがっちり掴み、振り払おうとしても無理そうな力だったので

『なんですか?』

とつくり笑いをして振り返った。


「暇やったら、飯食べていかない?」


『は?』


彼の一言に、
思わず目を丸くした。


「今ちょうど作り始めたとこだからさ。よかったら」


『…じゃあ』

「よっしゃ!んじゃあがって」



楽しそうにそう言った彼が、
不思議で仕方なかった。


よくあたしと一緒にご飯食べる気になるなあ…

あたしとご飯食べても、
楽しくないのにな。