いのり



思わず、笑みがこぼれる。



『甘いよ』



そしてあたしは引き金をひいた。


血を流して倒れた男の横を通り過ぎ、
部屋の中の盗聴器をすべて取り除いた。


この部屋には組織の手がかりは見つからず、
唯一役に立ちそうな名簿だけを持ち出して
あたしはこの部屋を去った。

急いで車に戻り、逃げるようにマンションを出る。


「お疲れ様です」


帽子を取って一息ついていると、
ミカがあわてた様子で後部座席のカーテンから顔を出した。


「SARA!追われています!」


あたしは首から鼻まで隠れる黒いマスクをし、
窓から外をのぞいた。

気持ち悪いくらい黒光りしたワゴン車が、
あたし達の車のあとを追ってきていた。


『ここじゃまずい』

「なんとかして場所を移しましょう」


Rはそう言ってハンドルを握りなおし、
ぐんとスピードを上げて道路から無理矢理路地裏に入り込んだ。