いのり



《はい》


『あ、先ほど申しました、○○宅配便です!』


男はすんなりとドアを開け、
先ほどの警戒していた男の声とは別人と思わせるほどで、
おまけに「どうも」なんていいながら軽く会釈をしてきた。


『印鑑をお願いしたいのですが、よろしいですか?』

「あ、すいません。ちょっと待っていてください」


あたしがそう言うと、
男は走って印鑑を取りに戻った。


その隙に部屋のドアをしっかり閉めて、
片方の手でポケットに忍ばせていた銃を握った。


そして再び男が戻ってきた。


「すいません。」


『…いいえ』


あたしは男に紙を渡した。

男はその紙を受け取り、
印鑑を朱肉に押し付ける。



『……そんなに隙、与えちゃっていいの?』



「……は?」


あたしの言葉に驚いて顔を上げた男のひたいに、
銃口をぴったりとつけた。