『……ねぇ、K』
『どうして芳田晴貴は
親の跡を継がずに普通の生活をしているの?』
《………》
『K?』
《余計なことはいい。準備を優先してくれ》
『……』
《マンションの駐車場の出口付近に白いワゴン車が停めてある。
車内にはすでにRが完備している。
部屋を出るところから車に乗るところまで、
怪しまれぬよう頭を使ってくれ》
『…わかった』
《ミカは監視役として車内に残しておけ。
お前のことだからないとは思うが、危険を感じたときはミカとRにすぐ連絡しろ》
あたしはKとの通話を切り、使う道具たちをかばんに入れて部屋を出た。
エレベーター内の監視は、
このマンションの管理人である橋本にすべて任せてある。
駐車場につくとすぐに白いワゴン車が目に留まり、
ミカの姿が確認できたのであたしはすぐに車に乗り込んだ。
『遅くなってごめん!』
「いいって!早く乗りなよー」
そんな適当な会話を済ませ、
勢いよくドアを閉めて車を発進させる。
