いのり




――日が沈んでくる。



あの電話から4、5時間ほど、
あたしはこの部屋で一言も発していない。


ソファの上で携帯が振動し、

緩んでいた緊張の糸が再びピンと張り詰めた。


『はい』

《見つかったぞ》


受話器から、Kの低い声。

裏切り者は、すでにあたし達の計画を知っているらしい。

しかし、ターゲットの組織でモグラとして動いているBTTのメンバーによると、
まだターゲットの組織にはこの計画のことは行き渡っていないようだ。

つまり、いつこの計画が敵の組織に行き渡ってもおかしくないという状況。


《一刻も早く殺す必要があるな》

『そいつはどこにいるの?』


《…お前のいるマンションの住民だ。
おそらくターゲットの監視役かなんかだろう。
ターゲットの組織の方で内密につけたに違いない》


『…そっか』


《慎重にやってくれ。指示は俺が出そう》

『わかった』

《倉庫はもう開けたか》

『開けたよ』

《そこから“道具”を取り出せ》


以前行った手順で倉庫を開き、
まだ一度も使われていない道具を取り出す。